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『君の瞳の影』 銀婚落部(PDF) 『銀山心中』(PDF) 令和を記念して詠む 君が代は千代に八千代に和を令し宇宙(そら)凍えても闇夜を照らす 宇宙もやがては死を迎え人類に永遠のポテンシャルが無く若き日の僕は内心絶望しながら生きていた。 永遠を君に約束できたならあの時僕は違ってたかも 静寂と孤独に沈む隔世(かくせ)にて揺蕩(たゆた)いながら時に委ねる 真夜中のラジオを聴きて夜明け前くゆらす紫煙君の面影 2019年2月1日39歳の誕生日に詠む。 宵闇に粉雪舞いて紫煙をと灯す炎に淡く煌めく 僕の愛するあの女は吐くと翳ろい消えゆく煙草の煙のような存在なんかじゃない。映画『君の名は』のヒロインみたいにどこにいるかわからないけれど確かにこの世界に存在し続けている。君の名を呼んでみる。君がふとあらわれるかもしれないという仄かな望みを込めて。愛している。 かげろいて消える紫煙にあるまじや誰そ彼の人は君の名を呼ぶ 春になり宙に浮いたような独特の期待と不安の混じり合った気持ちにひたり紫煙をくゆらせながら戀する誰そ彼の人の面影を思い描くが春霞のようにそれが誰なのかはっきりしない。 春の染ま紫煙はくゆり翳ろいて誰そ彼の君の面影霞む 桜の季節が再び到来した。 恋心を忍び耐えられずふらふらと桜咲く様をみていると咲き誇り乱れ散る桜が人生で無数に咲いては散ってゆく恋のように切ない。 忍ぶるに堪えずに望む桜花咲乱れ散る恋の如くに ひととせは一夜の如くおぼゆれど曙永し病室一人 『青が散る』という言葉に何か深い感慨を得ている。体の中から無限の如く湧き出てくるエナジーを持て余す青春時代。誰しも過ちを行う。たとえ正しいと確信していたとしても結果としてうまくいかない事も多々ある。 その度に青春の『青が散る』のだと思う。そうして若人はほろ苦い想い出とともに大人の階段を登りゆくのだろう。 青春の過ち一つ青が散る 彼岸過ぎ時雨れて冷えて冬に入る刹那彩る紅の秋 北海道では彼岸を過ぎると一雨ごとに寒くなりあっという間に冬を迎えます。だからこそからくれないに樹々の染まるつかの間の秋が尊くかんじるのかもしれません。 色づく紅葉も美しかったあの人も時を経るとやがては色褪せ枯れてしまうのなら時間など永遠に止まってしまえばいいのに。 彼のひともからくれないの紅葉も散るがさだめか時が止まれば 彷徨(いざよい)て迷う心も舞い乱るからくれないに月の静けさ 秋の詩です。十六夜に彷徨う人の心を妖しく色づけてゆく染まり散る紅葉とその紅葉を照らして静かなる月の対照の美を詠みました。 川島実氏の一句 酔って寝ればオリオン出たり秋の夜 にインスピレーションを受け一首 酔い乱れ大の字望む秋の夜の雲の間に降る月のさやけさ 冬の足音が聞こえてまいりました。 揺蕩(たゆた)いて白い煙を燻(くゆ)らせば雪虫の舞う秋の夕暮れ 神無月かたわれ時に紫煙たち闇夜に浮ぶ浄(きよ)きあやかし 十月の夜明け前の闇の中で紫煙をくゆらせていると煙からあやかしの類が浮かび上がってくるような悪寒を覚えた。きっと神無月のせいだろう。 月は出で千々に紅葉(もみじ)の乱れ舞うからくれないの秋の夜の君 北海道もいよいよ冬です。 濡れ路地にひらひら舞いて融ける雪やがて積もれる冬ぞ来たれり 奈良の名士川島実氏が撮影した窓景の写真がとても美しくインスピレーションを得て一冬の出来事を想起し一首詠みました。 凍える冬学生の僕は時々行き道の電車で一緒になる同級生との一時を数少ないあるいは唯一と言ってもいいかもしれない心の愉しみにしていた。 今日も運良く彼女と電車で出逢い混み合う車中開閉ドアを境にして二人寄り添う事が出来た。 ありきたりの会話を幾つか交わして無言になるそんな二人だったがそれでも僕は幸せだった。今日も幾つか会話をやりとりした後沈黙が二人を包んだがふと彼女が二人を隔てる凍てついたドアの窓の結晶に目をやり「冬だね」と呟くと凍てついた窓に暖かな吐息をかけた。 彼女の吐息がかかった箇所だけ冬が緩んだ。 彼女は冬へ感嘆しただけなのかもしれない。しかしながら僕には彼女の凍てついた窓への暖かい吐息が冬への春をもたらす確かな魔法のように感じられた。 凍てつきし列車の窓の結晶を溶く君の息春遠からじ 再び川島実氏の俳句にインスピレーションを得て 雨粒や波紋奏でるハーモニー 幾千の愛の言葉をしじまへと融きしくちづけいや語るまじ 平成三十年の歌会始の主題は「語」という事で一首詠んでみました。 彼岸を過ぎ夏から秋へ移りゆく今日此の頃小生の煙草からくゆらせる煙が今深緑に色づく木々の色をからくれなゐの黄葉紅葉に変え秋になり君の瞳を風情に彩る事を心より願っています。 君想い紫煙くゆらせかぎろいてからくれなゐの秋ぞ有らまし 君の事を想いながら煙草をくゆらせていると紫煙がかげろい消えゆくようにそして桜が散りゆくように今も一刻一刻と君のときめく限られた時間が流れ過ぎてゆくのが悲しい。 君想い紫煙くゆらせかげろいて桜散りゆく刹那を憂う 満開になると同時に散り始める桜の花それは世の無常なる流れそのものを表しているかのようです。 車椅子で桜並木へ漕ぎ出すと乱れ咲く桜があの人のように美しかった。 しかしその美しさは時が経ってしまえば散りゆく桜のような美しさに違いないがだからこそ今この瞬間を大事にしたいそう思うのだった。 春霞こぎゆく道の桜花君の如しよ散るといえども 譬え互いに自分で自分の気持ちにさえ気づかなくてもいつの間にか気になるあの人へ言葉に秘密の想いをのせてその言の葉がその人たちなりの流れで躍るが如く螺旋を描いて舞い亂れるなら譬え二人遠く離れていたとしても譬えそれがほんの泡沫―うたかた―の出来事だとしても二人は戀しあっていると言える。 言の葉に想いをのせて舞い散るは泡沫だとて戀というなり 宇宙は怖ろしい暗黒の空間で今僅かながら星々が輝いているが遠い未来には全ての天体が光を失い世界は闇に包まれてしまうという。しかしながら幼少時そんな無明の間―あはひ―である夕焼け空に光り輝いた雲の不死鳥はただの神様の気まぐれだったのかもしれないが私に無限の人類の未来を感じさせてくれた。そんな記憶が有る。 禍々し無明の間夕雲の衣ほすてふ天の気まぐれ 春の夜更け雪は融けて開放感が在るがそれだけに夜となると孤独感も募る夜更け他にすべきこともなくネットサーフィンをしようとしている僕は一体誰の事を調べようとしているのだろうかそしてあの人はインターネットで誰の事を調べているのだろうか。
素敵な異性に出逢いたいという独り身の贅沢な願望が有るがその異性に自分のこれまで積み上げて来た世界を壊されたくないという恐怖と似た感覚も在る なにもかも疲れ時だけが淡々と過ぎて行く いよいよ秋がやってきたけれどこの体ではもう秋の紅葉で染まる景色を目にする事も叶わないのだろう 滅ぶとて輪廻縁ぞ絡まりぬ明鏡止水मोक्षの果てに
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